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樹木医日記(2007年~)

樹木医日記-~木々との語らい~ 2007年11月

『かながわの名木100選』続報(樹木医 冨田 改)

 樹齢2000年『中川のほうき杉』
 
お久しぶりです。
当社の庭の施工例の更新を優先して進めておりましたので、このコーナーを3カ月ほどお休みしました。施工例はまだ6件ほどしか載っておりませんが、まだまだたくさんの例がありますので、今後も引き続き掲載していきます。ぜひ皆さんのお庭造りの参考にしていただけたらと思います。

ところで7月に紹介しました「かながわの名木100選」の調査がようやく終わりました。それぞれに存在感のある樹木たちとあらためて向き合うことができ、有意義な時間を持つことができました。
    ほうき杉の全体像
 
その中の一つ、県内最高樹齢の「中川のほうき杉」を簡単に紹介します。
この樹は、山北町中川の県道脇の斜面にそびえています。高さ42.5m、胸高周囲長11.09mの堂々たる大樹で、樹齢2000年と言われています。国の天然記念物に指定されており、所有者は文部科学省です。台風で大枝が避け落ちたことがあるそうで、そこを治療したあとがあります。石積み側の根元が腐朽しているので、今後の状態が心配されるところです。

今回の調査結果をまとめたものを、まもなく関係自治体等に提出する予定です。樹木は私たち人間が生きるために必要不可欠なものです。その樹木のシンボル的な存在である名木・古木たちをなんとしても守って行きたいと考えます。
大枝欠損部をセイソウセラミックで整形治療している
腐朽している根元部分

樹木医日記-~木々との語らい~ 2007年7月

『かながわのめい木100選』を知っていますか(樹木医 冨田 改)

 
日本樹木医会神奈川支部が調査を開始
樹木医 冨田 改
神奈川県では「かながわの名木100選」が選定されています。
これらの名木は地域のシンボルとして、また緑の象徴として、多くの市民、県民に親しまれています。

この名木100選の指定から、23年が経っています。
この間、必要に応じて樹木の診断・治療が行われましたが、統一した調査・診断は行われおらず、今日に至っています。

私の所属する日本樹木医会神奈川県支部では、これらの貴重な樹木の現状を把握するために、調査診断を行うことにし、6月7日、「真鶴半島のクロマツ」や湯河原町の「御所神社のクスノキ」「城願寺のビャクシン」を皮切りに調査をスタートさせました。
 
御所神社のクスノ木/真鶴町
城願寺のビャクシン/真鶴町
藤沢市の常光寺では、樹齢300年とされているカヤを6人の樹木医で観察しましたが、年輪調査を専門とする鈴木清樹木医から、樹齢は500~600年と推定できるのではないかとの意見がでました。

小田原市の小田原城址の御感のフジの調査では、樹木医の他に日本造園修景協会の会員やマスコミの人たちなど50人もの人が参加し、さまざまな意見が交わされ、フジの腐朽をとめることの難しさなどの指摘もありました。
 
常光寺のカヤ/藤沢市
小田原城址の御感のフジ/小田原市
この後も引き続き県内各地の名木を調査していきます。
それぞれの樹木が、後世まで残せるのか、残したいのか、いずれにしても現状を的確に把握しなければ何も判断ができません。

この調査をもとに、名木と指定された樹木たちへのより適切な対応を多くの方と共に考えていきたいと思います。

皆さんの身近にも選定されている木があるかもしれません。
興味のある方は、インターネットで「かながわの名木100選」を検索してみてください。

樹木医日記-~木々との語らい~ 2007年6月

接木Ⅱ 緊急処置としての『呼び接ぎ』(樹木医 冨田 改)

樹木の健康度をどう見るかは、なかなか難しいものがあり、数値で表現する方法も確立されていません。
そのためか、樹の状態が悪いとの相談があって診断に伺うと、症状が相当悪化している場合が多くあります。

写真の例は、樹の根元がカミキリ虫に侵されたため、根からの養水分の吸い上げがほとんどなく、早期落葉や先端枯れが生じてきていたものです。
そこで衰えた樹の根の代わりになるように若木をつないでやる「接木」を行いました。

つまり養水分を補給するためのバイパス手術をするわけで、この方法を「呼び接ぎ」と言います。
平成16年5月24日に接木を行う。
若木(カラタチ、根元にある細い苗木)を、
主木(ナツミカン)に接いでいる
(少し青色になっている所)
平成19年5月8日の状態
木がつながり、呼び接ぎした若木も太っている。
主木はこの接いだ木を通して養水分を得ている。

樹木医日記-~木々との語らい~ 2007年5月

接木を楽しむ(樹木医 冨田 改)

今回は、「接木(つぎき)」についてです。

今ある樹木の品種を残したい場合や増やしたい場合に、「接木」の技術を使います。
生物の「クローン(親と同質)」を作る場合、樹木では「挿し木」が完全クローンと言えるものになります。しかし「挿し木」が難しい樹種については「接木」を行います。


ここ数年、私もさまざまな接木に挑戦しています。
一例を挙げると、友人の樹木医が見つけた新種と思われる2種類の桜の接木を行い、「浜乙女」「湘南白波」などと名前をつけて盛り上がっています。
仕事柄、弱っている樹木を次世代につなぐために接木を行うこともよくあります。


また品種の更新や、一本の木で何種類もの品種を楽しめることも「接木」の良さです。

写真は、①紅梅に白梅を接いだもの、②接いだところから芽が出ている状態、③実生のサクラに河津桜を接いだものです。

そのほか、ブルーベリーのラビットアイ系にハイブッシュ系を接いだり、藤をさまざまな手法で接いでみたりなどもしています。
それぞれの生長後の姿を思い描くのも楽しいものです。
 

紅梅に白梅を腹接(はらつぎ)した例
腹接したところから芽が出ている
実生の桜に河津桜を腹接した例

樹木医日記-~木々との語らい~2007年4月

たかが木一本、されど・・・(樹木医 冨田 改)

今回は、道路と建物の間のわずかな隙間に立つ、立派なケヤキの話です。
おそらく開発が進む中で、むざむざ切り倒してしまうのは惜しいと、残されたものと思われます。
 
▲南側と北西側にあった傷
それぞれ腐朽部を取り除き、殺菌剤散布、
樹脂塗布を行い、最後に珪藻セラミックで整形をした
このケヤキに大きな傷が2ヶ所ありました。
10年ほど前についた傷が放置され、材の辺材部が腐朽したため、表皮との間に隙間が生じ、傷が広がったようです。
そこで隙間をなくし、腐朽を止めるための治療を行いました。
これによって樹皮の押し寄せが容易になると思います。

アスファルトに囲まれ、狭い地表という逆境の中にある木なので、根の活動が十分になされているとは考えにくく、治りは遅いと思いますが、とりあえずの処置は施せました。

このケヤキの立つ界隈は、街路樹も整備され、近くに公園もあり、比較的緑の豊かな地域なので、いっそ切り倒してすっきりさせるという考えも持てるかもしれません。

しかし大木の放つ存在感は、一度切ってしまえば、取り戻すのは難しいことです。
たかが木一本ですが、この木の緑がもたらしているさまざまな恩恵、そしてたゆまなく続いて来た生命の力には、やはり敬意を払いたくなります。
逆境の中でも豊かに枝を張っているケヤキ

樹木医日記-~木々との語らい~2007年3月

残念な処方ミス~樹皮が枯れてしまった松を治療(樹木医 冨田 改)

立派な松をお持ちのお宅から松の状態が悪いとの相談がありました。
拝見すると、マツノザイセンチュウ予防薬の投与の仕方が悪く、その薬害による樹皮枯損の状態でした。
問題があったのは、予防薬を投入する箇所を分散させずに集中させていることと、薬の液漏れをさせていて、その液により樹皮を傷めてしまっていたことです。
 
 
▲小さな丸が薬の投与跡。これでは一箇所に集まり過ぎです。
薬を打った所から液が漏れ、液漏れに沿って樹皮が枯れていました。
▲枯損部を削ってきれいにし、樹脂を塗布しました。
▲木部の欠損した部分をケイソウセラミックで埋めました。
両端から樹皮が成長してきます。
▲最初に剥がしておいた樹皮を貼り付けました。
生きている樹皮が成長してくれば、この貼り付けた皮は自然とはがれます。
 
見事な松なのですが、絆創膏を貼られたような痛々しい姿になってしまいました。
生き生きとした樹皮が、再び幹全体を覆うようになるには、15年から20年かかります。以前の基本的な処置ミスが本当に残念です。

移植作業

移植作業

移植作業
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