樹木医日記

樹木医日記~木々との語らい~No.44~

フジの瘤病治療 (樹木医 北 和俊)
 
今回はフジの瘤病治療についてお話します。
フジの幹にボコボコとこぶのようなものを見かけたことは無いでしょうか。
これは細菌が引き起こすこぶ病です。
 
初めは小さなこぶが出来、それが次第に広がり、どんどん大きくなっていきます。
大きくなったこぶの内部は腐敗空洞化して枝枯れ・幹枯れを引き起こし樹勢を衰退させます。
対処法は鋭利な刃物でこぶを切除し、切り口に癒合剤を塗るという方法が一般的です。
 
今回報告するフジの治療法として別の方法をご紹介します。
以下写真をご覧ください。

フジこぶ病写真

2013年10月
2018年2月
定点観測している患部です。
こぶの成長・進行が抑えられ、黒く変色していることがわかります。
これは尿素を定期的に患部に散布するという治療法です。
完全に確立された治療法ではないのですが、効果は得られていると考えられます。
 
なんとしてもフジの回復を願う、その思いで様々な治療法を試し最善を尽くします。
樹木医として最大限の努力と愛情を注ぐことが最も大切なことだと考えています。
 
 
 
 
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.43~

異形なるもの (樹木医 北 和俊)
 
ある現場で、ツバキの枝に普段見かけないものを見つけました。
通常のツバキの葉とは似ても似つかないものです。
これはヒノキバヤドリギという寄生植物です。
皆さんはご覧になったことはあるでしょうか。
宿木、寄生植物という名前からもわかるとおり、他の樹木に寄生し成長します。
種子が鳥によって運ばれ、糞と共に排出されます。
運よく木の枝等に糞が落ちると、粘着性のある種子はそこで発芽し寄生生活がスターするのです。
 
寄生されるとその枝は衰弱し枯れてしまうことが多く、また、一本の樹木が多くのヒノキバヤドリギに寄生されてしまうと樹木自体の生育が衰弱してしまうケースがみられ、最悪の場合枯死してしまいます。
 
樹木の弱体化を招く植物ですので、見つけ次第駆除するのが望ましいです。
今回のツバキも寄生された枝をしっかりと切り取り、駆除しました。
 
色々な戦略で覇権争いをする植物たち、勇ましく、賢く、感心してしまいます。
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.42~

幹に空いた謎の穴 (樹木医 北 和俊)
 
今回は弊社で管理している店舗のサクラを紹介します。
このサクラは、店舗南側歩道内の植栽帯に植えられている6本中の1本です。
地際付近に径10cm前後の穴が空いているとの通報を受け、調査してきました。
調査結果、以下の4点が被害として確認されました。
 
・樹冠部に枝枯れが生じている。
・一部の葉が小型化している。
・地上2mと7m付近にキノコが発生している。
・地際に径10cm程度の穴がある。
 上記のような状態に陥った原因は、おそらく根からの腐朽によるものと考えられます。
 
ルートカラー(根と幹の境)が確認できないので、深植えの可能性が高い。
このため、根の生育不良も疑われる。根の生育不良が腐朽菌の侵入を許す要因となったとも考えられる。
腐朽部分を健全な状態に戻すことは不可能なので、これ以上腐朽を拡大させないための対策を講じ、樹勢をこれ以上悪化させないようにしていきたいです。
 
枝枯れ部
小型化した葉
発生したキノコ
地際の穴
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.41~

樹木医の仕事 (樹木医 北 和俊)
 
今回は樹木医の仕事について、ある公園のサクラの事例をもとに少しお話します。
 
 
このソメイヨシノの大木は公園のシンボルツリー的存在になっています。
桜の季節には沢山の見物客がお花見に訪れます。
 
そんなソメイヨシノですが年月の経過とともに枝や幹に様々な傷みが生じていました。
調査してみるとキノコの発生、梢端部の枝枯れ、葉の小型化等が観察できました。
樹勢回復の手段は様々考えられます。土壌改良、エアレーション、根回りの踏圧防止柵の設置等々。
この公園におけるソメイヨシノの位置づけ、意味合いなどを考慮し、樹勢回復の手立てを取ることが出来たらと思います。
 
このサクラを管理している関係の方に、このソメイヨシノの現状分析と改善策を報告書にて提案させて頂きました。
予算の問題など、乗り越えなければならない課題は多々ありますが、長年この公園を見守って来てくれたソメイヨシノのためにも、このソメイヨシノを楽しみにしている利用者のためにも、良い方向に向かってほしいと願っています。
 
言葉を発せられない樹木たちに代わって、現状を伝え、将来に向かって改善提案をしていくこと、それも樹木医の大切な仕事のうちの一つなのです。
 

樹木医日記~木々との語らい~No.40

樹木の酸欠 (樹木医 高野 絵里奈)
 
樹木が生活をするためには、実はたくさんの酸素が必要です。
樹木は二酸化炭素を吸って、酸素を出してくれる生き物というイメージが強いので、意外なことと思われるかもしれません。
私も樹木医の勉強をするまでは知りませんでした。
今回は、樹木の根が起こす酸欠についてお話しさせて頂きます。
 
樹木の根は、深く植えすぎたり(図1)、植えた後にたくさんの土を根元に盛ったりする(図3)と酸欠を起こしてしまいます。
土の浅い所には酸素はたくさんありますが、深い所では酸素は少なくなるため、酸欠を起こしてしまうのです。
酸欠を起こすと根が弱ってしまい、時には根が腐ってしまったり、樹勢が衰退してしまう可能性があります。
中には、この状況を切り抜けようと頑張る樹木(図4)もいます。
元の根よりも高い位置から新しい根を出して、浅い所の酸素を取り込もうと頑張ります。
樹木が新しい根を出すときにはたくさんのエネルギーを使うので、早めに対応をして、樹木の負担を軽減してあげましょう。
 
今回の調査対象になっていた樹木は、多く盛られた土を除去し、経過観察を行うことにしました。
 
*周辺の環境や樹木の状態によっては深く植えた方が良い状況もあります
 
図1
図2
図3
図4
苦しくて、二段根が出ている様子
深植え状態

樹木医日記~木々との語らい~No.39

フジの異変 
 
今年もフジが随所で美しい花を咲かせてくれていました。
フジの名所に見に行かれた方も多いのではないでしょうか。
 
ところが、
「今年のフジは花が短いな・・・」
「もう少しで咲きそうなのに、蕾のまま落ちてしまう・・・」
こんな呟きを耳にする機会がいくつかありました。
 
いつもとはちょっと違う感じのするフジ、皆さんの周りにありませんか。
フジツボミタマバエが寄生して膨らんだ蕾
蕾のまま花が開かないフジの房
フジの房はあるのに花が短い、花が咲く前に蕾が落ちてしまう。
こんな症状がみられたら要注意です。
それは、フジツボミタマバエの仕業 かもしれません。
 
フジツボミタマバエはフジの蕾に産卵します。
幼虫は充実した蕾の中で孵化し、咲く直前の蕾を内部から食い荒らします。
結果、花は咲かず、蕾のまま地面に落ちてしまうのです。
 
 
地面に落ちてしまったフジの蕾
落ちた蕾を割ってみると、次々と蛆虫が・・・
丹精込めて育てたフジが咲かない、弱っていく、そんな姿は見たくありません。
しかし、残念ながら今のところ確実な対処法は確立されていないようです。
 
弊社では、ある程度発生を抑制するための処置を行い改善が見られた事例がありますので、
もしそのような症状のフジがあれば 一度ご相談頂ければと思います。
 

樹木医日記~木々との語らい~No.38

クロマツの樹勢回復処置 (樹木医 高野 絵里奈)
 
北樹木医が樹木医日記No.31、35で紹介したクロマツの樹勢回復処置について引き続きご報告します。
 
400年以上もの間、この土地の歴史を見守ってきたクロマツです。
様々な自然現象で枝折れ等により沢山の傷が出来てしまいました。
この様な傷は放置しておくと患部から腐朽が入り枝・幹を腐らせて行きます。
実際このクロマツの中心部は空洞化が進んでしまっている状態なのです。
よって今回の処置は、枝折れ等によってできた空洞部分を珪藻セラミックで蓋をし、クロマツ自身の治癒力で穴を塞ぐ手助けをすることを目的としています。
 
樹木は、下のイラストのように、折れたり切られたりした部分からカルスという癒合組織を作ります。
カルスは分裂・増殖を繰り返して樹皮に分化し傷を修復するのです。
 
枝折れや剪定で傷ついた枝は、
中心に向かってカルスを巻きます。
長い年月をかけて樹皮で覆い完治。
この松は患部の腐朽が進み、空洞化が随所に見られます。
この状態だと松自身の力だけでは穴を塞ぐことは難しく、また出来たとしても途方もない時間が必要になります。
今のままでは、更に腐朽が進み穴が拡大し、枝や幹の強度低下が懸念されます。
 
今回の治療は、下のイラストのように空洞化してしまっている枝を珪藻セラミックで塞ぎ、カルスで傷を塞ぎやすくする手助けを行おうという訳です。
 
 
傷んで空洞化した枝を、
切断し直します。
下地とパテで傷口を埋めます。
カルスが成長し傷を塞いで完治します。
before
after
 チェーンソーを使い患部を整え、パテで穴を埋めます。   さあ、これで処置完了です。穴の開いた患部が埋まりました。
                             これで腐朽の進行にブレーキを掛けられるはずです。
 
後はこのクロマツの治癒力に委ねることになります。
老木でもあり、患部が完全に樹皮で覆われるまでにはどれほどの年月を要するかは分かりませんが、きっと自身の力で傷を癒して行ってくれることでしょう。
今後も経過観察をし、見守って行きたいと思います。
 
最後に今回の作業では27ⅿの高所作業車を駆使しての作業となりました。
見晴らしは抜群でしたが、遮るものも何もない上空は風も強く、揺れと寒さで大変な作業でした。
しかし、この巨松はこんな過酷な状況でも400年以上ずっと人々の生活を見守ってくれていたと思うと、なんだかとても愛おしく、感謝の気持ちで一杯になりました。
これからも末永く生き続けてくれることを願います。

樹木医日記~木々との語らい~No.37

 
ナウシカになりたくて(樹木医 高野 絵理奈)
 
厳しい試験を乗り越えて試験に合格し、樹木医になりました。
小さい頃から風の谷のナウシカが好きで、いつかナウシカみたいになりたいと思ったことが樹木医を目指したきっかけです。
樹木医試験に向けての勉強は教科書の解読からでした。教科書はとても難しく、用語をインターネットや別の本から調べなければ読むことができませんでした。例えば、葉序。これは葉っぱの付き方の事なんですね。
1次試験の筆記テスト突破後は、2週間の勉強合宿の様な2次試験が待っていました。前日に講義や実習で行った事を翌日の朝にテストされるので、夜も安心して寝ることができませんでした。
そんな試練も樹木が好きという気持ちと周囲の方の支えでなんとか乗り切る事ができ、無事に合格することができました。
これからは、3人の樹木医の先輩方からご享受頂き、樹木と人の関係をより良くできる樹木医を目指して頑張ります!
テキスト
参考資料

樹木医日記~木々との語らい~No.36

巨大シダレザクラの移植(樹木医 北 和俊)
 
シダレザクラの移植作業について報告します。
今回移植したシダレザクラは高さ約8.5ⅿ、幹周約1ⅿとかなり大きなものです。
 
1.10ヶ月前に「根回し」を行いました
 
移植を行うにあたり予め準備するのが「根回し」という作業です。
当HPの「植木屋の女房№40」で10ヶ月前のこの時の様子を紹介しています。
 
造園業で行われる”根回し”とは、移植の数ヶ月前に根を切断することで細根の発生を促し、
移植先で根を活着しやすくさせる作業のことです。
 
細根が発生するまでには約半年から1年以上を要するため、予めそのような作業が必要になります。
大きな木の移植には、事前に入念な準備が必要なのです。
日常的に使われる”根回し”という言葉の語源となる仕事です。 
2.まずは掘り取り
 
まずは根鉢周りの土を掘り取り、根に着いた土が落ちないように根巻き作業を行います。
細根がしっかり出ているか、ちょっとドキドキしながらユンボを動かします。
3.ドキドキドキ・・・、細根は? 
 
見てください! 細根、確認できました。
ちゃんと根回しの効果が表れています。移植先での健やかな成長が期待できます。
細根写真1
細根写真2
4.次は根巻き作業
 
皆で息を合わせて緑化テープ、緑化縄を巻き付けます。
ポイントは縄の緩みが出ないようにすること。
根鉢を崩さないようにすること。
 
丁寧に綺麗に根巻きできました。
5.さぁ!積み込みです
 
この規模の移植の場合、人力では到底及ばないため、大型重機を使います。
ラフタークレーンを駆使し、木を傷めないように、かつ周囲の安全に最大限注意して積み込みます。
根鉢を崩さないように、吊り具で固定します。
移動するときに枝が折れてしまわないように、剪定したり枝を縛る作業を行います。
5.今回の移植は移動がもっとも大変でした
 
移植先は300mほと離れたところで、近いのですが、
両脇に電信柱と生垣があり、非常に狭い道を通る移動でした。
N君いわく「死にそうだった」。
この過程の写真がないので紹介できませんが、極度の緊張感の中での仕事でした。
 
再びクレーンで吊り上げ、丁寧に植え付けます。
角度や正面を見極め、微妙な調整を行い、水極めをし、支柱を設置して移植完了です。
 
4月の上旬の開花、その後の新葉の展開が見られれば、根が順調に活着したとみなせます。
2か月後の花を楽しみに待ちたいと思います。
この先に、狭い道の難所が待ち受けていました。
再びラフタークレーンで吊り上げます。
角度にも拘って丁寧に植え付けます。
移植完了。お疲れさまでした。
 
 
 

樹木医日記~木々との語らい~ No.35

クロマツノ樹勢回復(樹木医 北 和俊)

 6か月ほど前に菌根菌治療を行ったクロマツがあります。菌根菌とクロマツの根との共生関係が良好な兆候として、キノコが発生したという事例があるので、その確認も含めて経過観察に訪れてみました。
根周りの菌根菌治療を行った場所をみてまわると、5か所にキノコを確認できました。(写真1)
菌根菌とクロマツの根との共生関係が良好な兆候はみられましたが、6か月前の状態と比べて枝葉の量はそれほど増加しているとは言い難い状況です。(写真2)
今年の春から伸びてきた枝は、前年に作られた芽から展開した枝葉なので、菌根菌治療の影響がでてくるのは、今年作られた芽が展開する来年以降ではないか、と考えます。
今後、さらに枝葉の量が増加、樹勢が上向くことを期待し、観察を続けていきたいと思います。
 

写真1
 
写真2(左記、赤丸部のキノコ)
 

樹木医日記~木々との語らい~ No.34

カエデの異変(樹木医 冨田 改)

紅葉の季節が始まっております。

その年の気候とも関係しますが、今年の紅葉はどうだろうか。 

紅葉の代表的な木はカエデの仲間ですが、近年、紅葉が始まる前に落葉してしまったり、

葉が褐色に変色してしまったりと残念な結果となっています。 

 

皆さまの周りにはこんな現象は出ておりませんか。

これは明らかに病気です。

もしこのような症状が出ているようでしたら専門家に診てもらい、対処が必要です。

黒紋病、うどんこ病、首垂細菌病等、原因は様々考えられます。

お早目にご相談下さい。

 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.32

山下公園 土壌調査研修会(樹木医 関 隆夫)

〈山下公園 土壌調査研修会〉
横浜市と樹木医会神奈川県支部の共催で行われた研修会を紹介します。横浜市の山下公園の一角で横浜市の職員と神奈川樹木医会会員の総勢60人が植栽基盤調査の研修をおこないました。
今回の研修の目的は土壌調査の実習はもちろんですが、樹木医の仕事を横浜市職員の方々に知ってもらうことにあります。
まだまだ樹木医の認知度は低いと思われるので。
 
植栽基盤の調査に使う器具は、長谷川式土壌硬度計、長谷川式透水試験器、長谷川式検土丈、山中式硬度計等があるのですが、それらすべての使い方の研修をおこないました。
当社がユンボを使って観察用の穴を掘ったり参加者を誘導したりして、研修会のお手伝いをしました。
山下公園は関東大震災の時のがれきを埋め立ててその上に作った公園です。
今回の研修では深さ1mの観察用の穴を掘りましたが、その深さではまだ当時のがれきはでできませんでした。
後で資料を調べたら震災がれきがあるのは現在の地盤より5m下だそうです。
 
興味深かったのは検土丈を使って土壌のサンプルを採取した時のことです。深さ2.5mぐらいで水が出てきました。
しかもその水は塩水でした。近くの岸壁へ行って地上から海水面までの高さを測るとぴったり2.5mでした。
もしかすると山下公園の土壌は厚さ2.5mぐらいで、海水がしみ込んでいるのかもしれません。
公園の樹木は高さ10mを越えているものもありますので地盤の厚さが2.5mあればその大きさまでは育つということでしょうか。
写真1
写真2
私と当社の北樹木医(右)

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.31

クロマツの樹勢回復作業(樹木医 北 和俊)

〈クロマツの樹勢回復作業〉
今回はクロマツの樹勢回復について取り上げます。このクロマツは樹令420年、高さ27.7m、幹周り5.62mの堂々たる容姿の樹木
です(写真1)。
近年、樹勢の衰退が目立つようになってきたため、樹勢を向上させるべく菌根菌と肥料を用いた治療作業を行いました。
菌根菌とは、植物と共生関係にある菌類(キノコ・カビ類)のことです。アカマツ林に発生するマツタケも菌根菌の一種です。
菌根菌が根につくと、菌糸が、マツの根が届かないところまで広がり、マツは養水分を効率的に吸収できるようになります。
肥料は、モリブデンという微量要素を配合しているもの使いました。モリブデンは植物の生育に必要なエネルギーを作り出す回路に
なくてはならない成分です。
掘削には、空気の力で掘削ができるエアースコップを用いました(写真2)。これを用いることで、根を傷つけることなく掘削できるよう
になります。エアースコップを用いてマツの根を探り出し、上記の資材を施用しました(写真3)。
  今回の治療作業により、樹勢が回復し、地域のシンボルとなっているこのクロマツが末永く生育し続けていくことを願います。
写真1