本文へ移動

樹木医日記

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.58〜

クスベニヒラタカスミカメ
クスベニヒラタカスミカメについて (樹木医 冨田 改)
 
今回は最近流行しているクスノキの害虫について。
 
皆さんの周りに葉っぱが沢山落ちてしまっているクスノキはありませんか。
 
写真のようにたくさんの葉が8月~9月にかけて落葉してしまっています。
本来クスノキのは季節が変わる晩春から初夏にかけて葉を落とします。
今の時期に落葉するのは何かしら問題があるのです。
 
 
クスベニヒラタカスミカメの害を受けた葉
今回のクスノキの落葉はクスベニヒラタカスミカメというカメムシの仲間が原因です。
 
中国原産の直径1cmに満たない小さなカメムシで、関西地方から広まってきました。
今回見つかったこのクスノキは川崎にあり、関東地方でも害は広がりつつあります。
 
この時期に落葉してしまうと、木は新たに光合成で養分を作り出すために新葉を出します。本来葉を作る時期ではないに頃に葉を出すために無駄な体力を使うことになります。
これを繰り返すと木は徐々に弱っていくのです。
 
対応としてはこのカメムシを駆除するための薬剤散布を行います。
 
地球温暖化など様々な気候変動が起こっている昨今、日本では生息できなかった虫や植物が生き続けることができるようになってきました。それに伴い今まで経験したことのない現象が樹木たちにも襲いかかっています。
 
原因の解明から対症療法を行うだけでなく、本来あるべきの地球環境の維持を行っていけるよう日々の生活を見直さなくてはならないのかもしれません。
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.57〜

コフキタケ
コフキタケについて (樹木医 高野 絵理奈)
 
先日お手入れに伺ったお客様のお庭のクスノキにキノコを発見しました。約50センチほどの高さについていました。
 
キノコは生きた木に発生するキノコと枯れた木に発生するキノコの2タイプあり、今回発見したキノコは生きたクスノキに発生していました。
 
形や特徴からコフキタケと思われます。
 
ベッコウタケに似ていますが初夏から秋季に大量の胞子が放出され、傘の上面にも積もりココアパウダーを吹いたようになるの特徴です。
 
 
 
 
 
 
コフキタケ
先ほど生きた木に発生するキノコとお伝えしましたが、このタイプのキノコは少し注意が必要です。
 
枯れた木に発生するキノコは枯れ木を分解し土に返す分解者としてとても有効に働いてくれています。ところが、この生きた木に発生するキノコは樹勢を弱らせ、倒木などを引き起こす原因にもなります。
 
また、キノコが発生しているということは、実は木の内部では菌糸が充満している証拠なのです。
そして残念なことに、現在その樹体内に充満してしまった菌糸を取り除くための有効な手立てはありません。
 
今回、このクスノキに付いていたコフキタケは取り除き、経過観察を行っています。
 
実際の対処法としては、キノコが成長しにくい環境を作り出すことがそれ以上の腐朽を起こさせない最善の策と考えられます。
 
皆さんのお宅にも大切な樹木があるかもしれません。
キノコは発生していないでしょうか。
一度ゆっくり確認してみるのもよいかもしれません。
もし発生していたら、ご相談ください。
ご一緒に対処法を考えさせて頂きたいと思います。
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.56〜

かながわの名木100選について (樹木医 関 隆夫)
伊勢原大福寺のクスノキ 樹齢400年
 
 
 
かながわの名木100選とは、各市町村から推薦された2000本を超える樹木の中から、
 
①単木であること。
②古木、巨木、姿が優れているなど特色のあるもの。
③地域の人々に親しまれ、守られているもの。
 
という3つの基準で選ばれた100本の樹木です。
1984年(昭和59年)に選定されました。
 
私は、自分が調査に係った樹木の中で、とても好きになった木があり、それが名木100選に入っている木だったことから100本すべて見てみたいと思うようになりました。
時間を作っては訪ねてはいるのですがまだ全部は見られていません。
それに季節によって見える姿が違うので落葉樹は夏と冬の2回は見に行きたいですし、サクラやツバキは花が咲いている時期に行ってみたいです。
また、弱っているように見えた木は経過が気になります。とりあえず現在見に行けるものは1回訪ねてみてその中から気になるものについては再度見に行きたいと思います。
古木、巨樹といわれている樹木は圧倒的な存在感があり、とても魅力的です。
それらの樹木が衰退して無くなってしまうのはとても残念ですが名木100選に選ばれている木でも維持管理は所有者が行うのが原則となっており、たとえ弱ってきたとしてもどうにもできない場合があるのが実情です。
それも仕方がないことだとは思いますが私が非常に残念に感ずるのはいつの間にか消えてしまっている木があることです。
樹木医会神奈川県支部では2006年(平成18年)に100本の調査を行いましたがその時にはすでに10本が滅失していたそうです。
 
最近、私が訪ねた中でもさらに数本が無くなっていました。
滅失した樹木にはどうして無くなってしまったかの記録が残ってないので、せめて衰弱してゆく過程を観察して記録として残すべきです。
それには定期的な調査が必要だと思いますが私個人としてはお気に入りの木を訪ねていきたいと思います。
 
最後に私が気に入っている木を3本紹介します。
伊勢原大福寺のクスノキ 樹齢400年
 

気になる木①

伊勢原大福寺のクスノキ 樹齢400年

とにかく太い枝が落ちて、幹が空洞でも枝を伸ばし続けているのがすごい。

 

鶴巻の大ケヤキ 樹齢600年
 

気になる木②

鶴巻の大ケヤキ 樹齢600年

県内で一番太いケヤキらしい。かなり傷んでいるが頑張っている姿が素敵。

 
篠窪の椎の木森のシイ 樹齢520年

気になる木③

篠窪の椎の木森のシイ 樹齢520年

道路に競り出している姿が圧巻。幹に空洞があり、いつ倒れても不思議でない。鉄骨で倒木予防を立てているが心もとない。 篠窪の椎の木森にはこの椎の木以外にも巨木がたくさんある。

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.55〜

続・カイガラムシ対策について (樹木医 高野 絵理奈)
 
今回は前回行ったカイガラムシ対策の経過報告について。
 
先日5/20に再びモチノキに薬剤散布を行いました。
その際にモチノキがどのような状態になっているか確認してきましたのでその報告です。
 
まず前回の作業確認、前回は
 
・現状分析 → テデトール(手で取ーる) → 薬剤散布
 
を行いました。
 
求められる結果は、カイガラムシの減少、スス病の改善でした。
 
ひと月たってどうなったでしょうか。
ルビーロウカイガラムシとスス病
①カイガラムシとスス病の改善状況
 
枝先にまだ少しカイガラムシが見えますが、前回のテデトール・薬剤散布の効果がみられ、大分少なくなりました。
枝にびっしりカイガラムシがついているという状態はひとまず脱しました。
 
スス病に関しても、真っ黒なススがペースト状に枝葉についている状態のものは見られません。
悪化したり新たに生じたものは無いようです。
 
カイガラムシ・スス病を完全に取り除くのは難しいですが、確実に効果が出ていると感じました。
 
 
芽吹き
②芽吹きの状況
 
前回の樹木医日記には明記しませんでしたが、薬剤散布等の作業をする前に、風通しを良くし光を入れる目的で枝抜きを行いました。
 
その効果も見られ、たくさんの新芽が吹き、新しい葉を広げていました。
 
風通しを良くすることで病害虫の住みにくい環境を作る、込み合った枝を抜くことで、枝や幹に光を当てて芽吹きを促すことができます。
 
今回出た新梢を大切に育て、新たにカイガラムシやスス病を発生させないように対応していければ、より一層の樹勢回復も望めると考えられます。
 
 
タイワントガリキジラミ
③新たな宿敵(タイワントガリキジラミ)の出現
 
葉の裏がぶつぶつクレーターのように穴が開き、茶色に変色したモチノキの葉を見たことはありませんか?
 
近年急激に増殖していると思われる虫がいます。
台湾周辺から入ってきたタイワントガリキジラミです。
 
タイワントガリキジラミはモチノキなどの葉に卵を産み、幼虫が葉を住処にし、食害します。
見た目悪く、大量に発生すると樹勢も弱ります。
 
何と、このタイワントガリキジラミの幼虫が葉の裏から見つかったのです。新たな敵の出現です。
 
やっとカイガラムシ対策で改善が見られてきたのに・・・。
やはり、樹勢が弱っていると病害虫を寄せ付けてしまうのでしょうか。
 
 
 
 
 
カイガラムシ・スス病が減少し、芽吹きも多く、改善が見られました。
対応に当たった担当者全員、ホッしたのと同時に大変嬉しく思いました。
 
今後も樹勢回復が少しでも促されるよう取り組んでいきたいと思います。
 
新たな敵、タイワントガリキジラミとも対峙しつつ、絶対に元気にしてやるぞ!と強い気持ちを持って、皆で寄り添っていきたいと思います。
 
 
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.54

カイガラムシ対策について(樹木医 高野 絵理奈)
 
今回はカイガラムシ対策について。
 
お客様から大切にしているモチノキのが真っ黒になっているので何とかしてほしいとのご相談を受けました。
 
確認すると枝という枝にカイガラムシがびっしり。
その影響でスス病を併発、モチノキが真っ黒になってしまっていました。
 
カイガラムシはその名の通り、自身の出す分泌物で殻をつくり、その中で成虫が生活しています。(※殻を持たない種類もいます)
ですから、通常の薬剤散布を行っても、ロウ物質の殻で守られているため薬が効きにくく、なかなか思うように退治できないのが特徴です。
では、どのようにこのカイガラムシに対処するのでしょうか!
今回行った対処法を見てみましょう。
 
 
ルビーロウカイガラムシ + スス病
①確認作業
 
枝先に見えるツブツブがすべてルビーロウカイガラムシ。
このツブツブがほとんどの枝先についています。
 
カイガラムシの出す分泌物が原因で、スス病という病気を発生させます。幹・枝・葉っぱの表面が真っ黒。これでは十分な光合成もできず、樹勢も弱っていきます。
テデトール
②カイガラムシ除去
 
カイガラムシは堅強な殻をまとっているため、単純に薬剤散布を行っても薬が効かず退治しにくい害虫です。
 
そこで活躍するのがテデトール!
聞きなれない言葉だと思います。
殺虫剤の名前ようにも聞こえますね。
いえいえ違います、『手でとーる」です。
そう、手で取るんです。笑
 
一本一本の枝を丁寧にしごいて、カイガラムシとスス病を取り除いていきます。なかなか途方もない作業です。
でもこれが一番効くんです。
 
薬剤散布
③薬剤散布
 
綺麗になったところで薬剤散布。
取り残しや、今後新たに発生するであろうカイガラムシに対して対応します。
今回はハンドスプレーを使用し、丁寧に、確実に薬液を葉先まで吹きかけます。
 
何としてもモチノキを元気にしたい、その思いが丁寧な仕事の原動力になります。
今回行ったカイガラムシ対策はカイガラムシ対策としてはよく知られていますが、手間と時間が大幅にかかるため高木に対しては、よほど大切にされている樹木以外に行われることは稀です。
 
そして、確実に思えるこの方法でもカイガラムシを100%取り除くことは困難です。
 
ですから、今後はよく観察し、カイガラムシの生理を理解し、適宜薬剤散布を行ったり、再びテデトールを行ったりして減らしていくことが必要です。
 
絶対に元気にしてやるぞ!という熱い思いを胸に今後も対応していきたいと思います。
 
 
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.53

マツの菌根菌治療について(樹木医 冨田 改)
 
今回はマツの菌根菌治療についてお話します。
 
知り合いの植木屋から、最近手入れに伺うようになったマツの調子が悪いので見に来てほしいとの依頼がありました。
確認に行くと、下枝が枯れていました。虫が入った様子はなく、葉枯病の症状がみられました。
多方面から考察し、根に原因があるのではないかと考えられ、土壌改良、菌根菌の治療を行うこととしました。
 
 
下枝の枯れたマツ
①確認作業
 
掘ってみると案の定、たくさんの固形肥料が埋まっていました。
マツは肥沃な土壌を好まない樹木です。海辺の砂地に多く生息するのもその理由です。
肥料を除去し埋め戻しました。
土壌改良
②土壌改良
 
既存の土を根鉢に沿って帯状に掘り、細炭を入れます。
その後、菌根菌という菌類を細炭の上に撒きます。
マツは菌根菌という菌類と共生しており、菌根菌の働きがマツの健康にも大きな影響を及ぼすのです。
 
菌根菌治療
③菌根菌治療
 
細炭の上に数種類ブレンドした菌根菌を撒きます。
マツとの共生が促進され、根の動きが活性化されることが期待されます。
 
 
今回はマツの菌根菌による治療を行いました。
 
前回のエアスコップによるサクラの土壌改良もそうでしたが、根の状態が健全であることが樹木にとってはとても大切なことです。根の状態は掘ってみないとわからない部分なので、枝、葉の状態をよく観察し、知識と経験から治療方針を決めていきます。
 
今回の治療により、樹勢を回復してくれることを願い、経過観察していきたいと思います。
 
 
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.52〜

サクラの土壌改良について(樹木医 冨田 改)
 
先日、藤沢にある幼稚園のサクラの土壌改良を行いましたので、そのことについてお話したいと思います。
 
このサクラは幼稚園の正門の横に植えられていて、園児のことをずっと見守ってきた大切なサクラです。
そのサクラの枝枯れが多くみられるようになり、何とかしなくてはと依頼を受けました。
 
診断の結果、土壌が固く根の育成に支障をきたし、サクラ自体の健康を損ねているものと考えられました。
そこで既存の土を除去し、土壌改良を施し、発根を促す治療を行うことにしました。
 
 
①既存土壌の除去作業
①既存土壌の除去作業
 
・根を傷めないよう、エアースコップと呼ばれる空気を送る機械を用い根っこ周りの土を吹き飛ばします。
 土埃がすごいので、周りを防風ネットで囲い近隣に迷惑のかからないよう配慮をします。
 
土壌改良
②土壌改良
 
既存の土と土壌改良剤を混ぜ、根回りにまき埋め戻します。
今までカチカチの土壌が、柔らかく発根しやすいサクラに優しい土壌に変わりました。
囲い設置
③囲いの設置
 
周りの園庭に比べ格段に柔らかくなったサクラの根回りに囲いをして、園児が入らないようにします。
園児の怪我の防止、踏圧によってサクラの根が傷むのを防止する役割があります。
 
今回は土壌改良をすることで、発根を促しサクラ自身で回復するようにする施術を行いました。
 
固まった土壌を掘り起こすことで土壌が柔らかくなり根が伸びやすくなりました。
土壌改良材を入れた土を戻すことで根の発育が良くなると考えられます。
 
樹木は上部の枝葉と根のバランスを取って成長しています。
根が元気になれば、上部も元気になりサクラ自身が元気になることでしょう。
 
これからもこのサクラが園児たちを末永く見守ってくれるよう、支えていきたいと思います。
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.51

街路樹診断について(樹木医 北 和俊)
 
今回は街路樹診断について。
 
道路沿いに樹木が植えられていると思いますが、その樹木たちを街路樹といい、樹木医により定期的に樹木診断を行っています。
 
樹木の健康診断と思っていただけたらわかりやすいかと思います。
 
倒木や枯れ枝が落ちてきて人や建物、車などに当たり事故や怪我が発生しないようにすること。
枝が張り出して通行の邪魔にならないようにすること。
そのような観点から診断を行い、問題があれば緊急度に応じて対応をします。
 
基本的に県道は県でその他の道に植えられている街路樹は市区町村の管轄になります。
よって依頼主は県や市などです。
 
さて、では実際どのようなことを行っているのでしょうか。
 
 
①基本データ調査
①基本データ調査
 
・樹種
・樹高(木の高さ)
・枝張り
・全景写真等
 
一本一本すべての樹木に個体番号を付けます。
そして基本データを取りカルテに記録します。
 
打診音調査
②打診調査
 
木槌で叩き内部が空洞化していないか確認します。
 
空洞がない樹木と空洞のある樹木では明らかに音が違います。
範囲と深さによっては樹木が倒れてしまう恐れも有ります。
危険と判断された場合は精密診断を行ったり、伐採をしたりする場合があります。
 
鋼棒陥入調査
③鋼棒陥入調査
 
鋼棒という鉄で出きた棒を根元に突き刺し、根元に異常がないか確認します。
確認する内容は
 
・根周りの地盤の柔らかさの確認
 根周りの地盤の柔らかさを確認し、しっかり根が張れる土壌か確認します。
 
・根元の腐朽の有無の確認
 根元に腐朽が起きていないか、キノコなどが発生していないかを確認します。
 根元が腐朽していると倒木の恐れも出てくるので、慎重に場所を変えて何度も突き刺します。
 
上記調査以外にも、不自然な傾きはないか、枝葉の育成は健全か、虫、病気は発生していないか等々確認をします。
 
そして、それらデータをまとめ報告書を作成するのです。
報告書作成もなかなか手間のかかる作業で、提出期限近くになると作業が夜遅くまで続くことがあります。
 
晴れて依頼主である県、市区町村に届けられた報告書により、異常のあった樹木は治療、伐採、植え替えなどの対応がなされるのです。
 
日頃、樹木医の仕事を目にする機会は少ないと思いますが、このように、皆さんの安全な市民生活を守る街路樹診断も樹木医の大切な仕事のうちの一つなのです。
 
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.50

マツノザイセンチュウについて(樹木医 関 隆夫)
 
11月初旬に藤沢の県道沿いに植えられていたマツの伐採を行いました。
樹高が10m以上もある立派なマツでしたが残念ながら枯れてしまったのです。
事前に調査し、マツノザイセンチュウがその原因であると判明しての作業でした。
 
皆さんの周りで急にマツが枯れてしまったことはありませんか。
大きさに関係なく、このマツノザイセンチュウに寄生されると、瞬く間にマツは枯れてしまうのです。
そのスピードたるや!『あれ、葉が茶色になってきたな』と思っていると夏場だと1か月ぐらいで全体が枯れて手の施しようがなくなるのです。
何とも恐ろしい病害虫です。
 
今回はその正体を画像でお見せし、枯れるまでのメカニズムを少しお話したいと思います。
枯れたマツ
今年の夏に、急に県道沿いのマツが枯れました。
 
依頼を受け、マツノザイセンチュウの疑いがあるためサンプルの木片を採取し、弊社で検査しました。
 
 
 
ベールマン法による抽出
ベールマン法という抽出方法で抽出し、デジタル顕微鏡で確認しました。
写真のようにペットボトルとコーヒーフィルターを使用すると簡単に抽出キットを作成できます。
マツノザイセンチュウは枯れたマツの中に充満しているため、マツノザイセンチュウが原因で枯れたのであれば、抽出は可能なのです。
 
 
さて、抽出検査の結果は・・・
 
出ました!!!!
下の画像をご覧ください。

マツノザイセンチュウ 画像

このニョロニョロ動いているのがマツノザイセンチュウ(マツの材線虫)です。
成虫の体長は1mm程しかなく、肉眼で確認するのは難しい、その名の通り線虫です。
 
やはり、このマツはマツノザイセンチュウが原因で枯れたのです。
 
では、この体長1mmにも満たないセンチュウがいかにして、巨大なマツを枯らすのか簡単に説明していきたいと思います。
 
まずは、どのようにマツに侵入するのか。
 
マツノザイセンチュウは画像のニョロニョロが成虫です。
それ以上変態しません。ですので単体で移動はできません。
 
マツノザイセンチュウはカミキリムシを移動手段に利用するのです。
 
マツノザイセンチュウはカミキリムシに寄生します。
寄生されたカミキリムシが産卵のため樹皮に穴をあけ侵入します。
その時に新しいマツに侵入するのです。
 
次にどのように枯らすのか。
 
マツノザイセンチュウは寄生したマツの中で爆発的に増殖します。
そして、水を吸い上げる機能を持つ仮道管を詰まらせることにより、マツは通水障害を生じ、枯れるのです。
 
マツは増殖したザイセンチュウに材を食い荒らされて枯れるのではなく、組織が破壊され、死細胞から漏出した物質により仮道管の閉塞、機能不全で枯れるのです。
 
メカニズムの詳細を語りだすと、短編小説ぐらいのボリュームになってしまうので、この辺で終わりにします。
 
残念ながら今のところ、カミキリの侵入からマツノザイセンチュウの病害に対する完全な防除方法は確立されていません。
カミキリは弱ったマツに寄生するので、マツを弱らせないことが重要であると考えられますが、なかなかその判断は難しいと思われます。
マツノザイセンチュウが入ったマツはマツヤニが極端にでなくなるので、早期発見のある程度の判断基準にはりますが、入ってしまったマツを救う手だてはないのです。
今回伐採したように、マツノザイセンチュウが検出されたマツは伐倒、焼却処分し広がりを防ぐ必要があります。
 
大切なマツにマツノザイセンチュウが入り込まないように、土壌改良や定期的な手入れをし、マツを元気にしておくことが重要です。
 
今後、科学技術の進歩によりマツノザイセンチュウに対する対処方法が確立されるのを期待しています。
 
 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.49〜

台風による倒木被害について(樹木医 関 隆夫)
 
今夏は西日本を中心に、全国的に豪雨災害や台風による人や建物に対する甚大な被害が発生しました。
樹木に関しても、倒木や塩害などで大変な被害を被り、弊社も9月一杯、その対応に追われました。
 
そこで、今回は台風による倒木の考えられる原因について考察してみたいと思います。
 
気象庁の資料によると、風速24.4~28.4m/sで樹木は根こそぎ倒れるといわれています。
ちなみに台風21号の最大瞬間風速は和歌山市で57.4m/s、関西国際空港で58.1m/s、東京の都心で26.8m/sでした。
 
しかし、いくら台風がすごいと言っても全ての木が倒れるわけではありません。では倒れてしまった木は何故倒れてしまったのでしょうか。
 
考えられる原因は主に3つあります。
①無剪定による倒木
①無剪定による倒木
 
剪定されていない樹木は風が通り抜けず、直接風の影響を受けてしまい、その風圧に耐え切れずに倒れてしまったのです。
庭の生垣に用いられるコニファー等の葉の密度の濃い樹木にこのケースが多く見られます。
キノコによる腐朽
②内部腐朽による弱体化
 
枝折れや、虫害など、何かしらの原因で樹木が病気や菌に侵され、木質が腐朽し樹木の強度が弱まっていた。
そこに強風が吹き、風圧に耐えられず倒れてしまった。
浅い根による倒木
③浅い根による倒木
 
写真の樹木は15m以上もあるタイサンボクです。
ご覧頂いてわかるように、根が平坦で支えになるような下に伸びる根(直根)がほとんど見られません。
これは植えられている場所の地盤が岩盤になっており、その上に客土された非常に根が張りにくい場所に植えられていたのです。
この他にも、都心部などはビル風の影響で一か所に風が集中してしまいその風圧を受けてしまったり、地盤が弱く雨水の影響で根が耐えられなかったり、と様々な要因が考えられます。
 
今回の台風での倒木の多くは、それら原因が複合的に影響しあったものだと考えられます。
 
ニュースの映像や、実際に倒木にあってしまった方は、こんなに大きな木が倒れてしまうのか、と驚きまた、同時に危機感を覚えたのではないでしょうか。
支柱をする、剪定をし風を抜けやすくする、樹木内部の腐朽率を調べ、倒木の危険度を知り対応策を考えるなど対策はあります。
もし身近に心配な樹木があれば一度相談されてもよいかもしれません。

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.48〜

ハルニレの樹木診断(樹木医 高野 絵理奈)
 
ある神社に植えられているハルニレを定期診断をしています。
 
主に地上部により外観診断をおこなったのですが、樹勢についておおむね健全という診断結果が出ました。
ただし、地上部から判断しきれない上部に対して高所作業車を使用しての診断をご提案させて頂きました。
神社のハルニレ

 

ここで一つ気になることがあり、お話したいと思います。
このハルニレは以前ニレチュウレンジというハバチが大量発生し食害を受けました。そのため神社は対策として防虫シートを施工し、毎年、業者による薬剤散布を行い発生を抑えている状況です。

 

さて突然ですが、皆さんはワカケホウセイインコというインコをご存知でしょうか。このインコは外来種でペットとして飼われていたものが逃げ出し、自然増殖しているようなのです。カラスを一回り小さくしたぐらいの大きさで、草食ではあるのですが、性格が凶暴で日本の在来の鳥たちを攻撃し追い出しているというのです。

 

実はこの神社にはこのワカケホウセイインコがたくさん生息しています。

このワカケホウセイインコが増殖した時期と、ハルニレにニレチュウレンジが大量発生した時期がどうやらリンクしているらしいのです。

ワカケホウセイインコ

簡単にまとめると、

 

①飼われていたワカケホウセイインコが逃げ出し、増殖した。

②ワカケホウセイインコは住処を確保するため、神社にいた昆虫を食べる在来種の野鳥を追い出した。

③捕食者である野鳥がいなくなった為、食物連鎖のバランスが崩れニレチュウレンジが大量発生してしまった。

 

というロジックです。

これはあくまで仮説にすぎないのですが、少なからずその影響はあるのではないかと考えています。

 

この事例にみられるように、樹木医は木のことだけを見ていては正確な診断や対処方法は得られないということです。

 

木を見て、森を見て、昆虫をみて、地域社会を見て、牽いては世の中の動き、人々の生活の動向まで視野にいれて考察しなければならないと再認識しました。

 

今後も広い視野を持って、幅広い知見の元診断を行っていきたいと考えています。

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.47〜

サクラの樹勢回復(樹木医 北 和俊)
 

 

これは以前紹介した弊社で管理している公園内のサクラの根の写真です。

 

数年前より枯枝が増えてきた影響で開花の数も少なくなってしまいました。

原因を調査していた所、この様な状況の根を発見し、根の凸凹の正体を判明すべく病理鑑定に出しました。

 

その結果、根の凸凹はネコブセンチュウという体長1mm以下のウナギ型の微細な生物の仕業と判明しました。

 

このセンチュウ類の仲間に対する防除法は幾つかありますが完全に除去することは難しく、

根の処置は今後、解決せねばならない課題の一つとして悩まされそうです。

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.46

シラカシの樹勢回復(樹木医 高野 絵理奈)
 

 

今回は、樹木医日記No.40でご紹介したシラカシの余盛除去処置後の経過報告をさせていただきます。

 

処置後一年を経過しての写真です。

左と右を見比べてみてください。

 

明らかに新しい枝が内側から吹いているのがわかります。

また、葉の大きさ、色、艶もよくなっています。

2017年6月
2018年6月
このように、しっかりと木の生理に則した樹木治療を行えば、植物たちはそれに応え、自分の力で元気を取り戻していきます。
 
大前提として、樹木が健全に育つことのできる植栽、剪定をしなければなりません。
樹木、植物たちに関わるものとして、その責任を胸に今後も取り組んでいかなければならないと感じています。
 
このシラカシは今後も経過観察を続けて行き、また成長の過程をご報告したいと思います。
 
 
 
 
 
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.45~

ソメイヨシノの剪定(樹木医 高野 絵里奈)
 

 

今回は、以前から樹勢回復を行ってきたソメイヨシノについての報告です。

 

このソメイヨシノは、地域のシンボルとして、市の天然記念物に指定されています。

 

冨田樹木医が依頼を受けてはじめて伺ったときは、深植えによる樹勢衰退が確認され、キノコもたくさん出ている状態だったそうです。

 

現在は、余盛りの除去、土壌改良、キノコの殺菌などの定期的な治療により、樹勢が回復しつつある状態です。

ふところからでた新しい枝もだいぶ大きく成長してきました。

今回の剪定は、その新しい枝に光を当てて育成をすることを目的として行いました。

どうか、うまく育ってくれますように。

 

今後も定期的な治療と経過観察を続け、このソメイヨシノの回復を見守っていきたいと思います。

 

樹木医日記~木々との語らい~No.44~

フジの瘤病治療 (樹木医 北 和俊)
 
今回はフジの瘤病治療についてお話します。
フジの幹にボコボコとこぶのようなものを見かけたことは無いでしょうか。
これは細菌が引き起こすこぶ病です。
 
初めは小さなこぶが出来、それが次第に広がり、どんどん大きくなっていきます。
大きくなったこぶの内部は腐敗空洞化して枝枯れ・幹枯れを引き起こし樹勢を衰退させます。
対処法は鋭利な刃物でこぶを切除し、切り口に癒合剤を塗るという方法が一般的です。
 
今回報告するフジの治療法として別の方法をご紹介します。
以下写真をご覧ください。

フジこぶ病写真

2013年10月
2018年2月
定点観測している患部です。
こぶの成長・進行が抑えられ、黒く変色していることがわかります。
これは尿素を定期的に患部に散布するという治療法です。
完全に確立された治療法ではないのですが、効果は得られていると考えられます。
 
なんとしてもフジの回復を願う、その思いで様々な治療法を試し最善を尽くします。
樹木医として最大限の努力と愛情を注ぐことが最も大切なことだと考えています。
 
 
 
 
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.43~

異形なるもの (樹木医 北 和俊)
 
ある現場で、ツバキの枝に普段見かけないものを見つけました。
通常のツバキの葉とは似ても似つかないものです。
これはヒノキバヤドリギという寄生植物です。
皆さんはご覧になったことはあるでしょうか。
宿木、寄生植物という名前からもわかるとおり、他の樹木に寄生し成長します。
種子が鳥によって運ばれ、糞と共に排出されます。
運よく木の枝等に糞が落ちると、粘着性のある種子はそこで発芽し寄生生活がスターするのです。
 
寄生されるとその枝は衰弱し枯れてしまうことが多く、また、一本の樹木が多くのヒノキバヤドリギに寄生されてしまうと樹木自体の生育が衰弱してしまうケースがみられ、最悪の場合枯死してしまいます。
 
樹木の弱体化を招く植物ですので、見つけ次第駆除するのが望ましいです。
今回のツバキも寄生された枝をしっかりと切り取り、駆除しました。
 
色々な戦略で覇権争いをする植物たち、勇ましく、賢く、感心してしまいます。
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.42~

幹に空いた謎の穴 (樹木医 北 和俊)
 
今回は弊社で管理している店舗のサクラを紹介します。
このサクラは、店舗南側歩道内の植栽帯に植えられている6本中の1本です。
地際付近に径10cm前後の穴が空いているとの通報を受け、調査してきました。
調査結果、以下の4点が被害として確認されました。
 
・樹冠部に枝枯れが生じている。
・一部の葉が小型化している。
・地上2mと7m付近にキノコが発生している。
・地際に径10cm程度の穴がある。
 上記のような状態に陥った原因は、おそらく根からの腐朽によるものと考えられます。
 
ルートカラー(根と幹の境)が確認できないので、深植えの可能性が高い。
このため、根の生育不良も疑われる。根の生育不良が腐朽菌の侵入を許す要因となったとも考えられる。
腐朽部分を健全な状態に戻すことは不可能なので、これ以上腐朽を拡大させないための対策を講じ、樹勢をこれ以上悪化させないようにしていきたいです。
 
枝枯れ部
小型化した葉
発生したキノコ
地際の穴
 
 

樹木医日記~木々との語らい~No.41~

樹木医の仕事 (樹木医 北 和俊)
 
今回は樹木医の仕事について、ある公園のサクラの事例をもとに少しお話します。
 
 
このソメイヨシノの大木は公園のシンボルツリー的存在になっています。
桜の季節には沢山の見物客がお花見に訪れます。
 
そんなソメイヨシノですが年月の経過とともに枝や幹に様々な傷みが生じていました。
調査してみるとキノコの発生、梢端部の枝枯れ、葉の小型化等が観察できました。
樹勢回復の手段は様々考えられます。土壌改良、エアレーション、根回りの踏圧防止柵の設置等々。
この公園におけるソメイヨシノの位置づけ、意味合いなどを考慮し、樹勢回復の手立てを取ることが出来たらと思います。
 
このサクラを管理している関係の方に、このソメイヨシノの現状分析と改善策を報告書にて提案させて頂きました。
予算の問題など、乗り越えなければならない課題は多々ありますが、長年この公園を見守って来てくれたソメイヨシノのためにも、このソメイヨシノを楽しみにしている利用者のためにも、良い方向に向かってほしいと願っています。
 
言葉を発せられない樹木たちに代わって、現状を伝え、将来に向かって改善提案をしていくこと、それも樹木医の大切な仕事のうちの一つなのです。
 

樹木医日記~木々との語らい~No.40

樹木の酸欠 (樹木医 高野 絵里奈)
 
樹木が生活をするためには、実はたくさんの酸素が必要です。
樹木は二酸化炭素を吸って、酸素を出してくれる生き物というイメージが強いので、意外なことと思われるかもしれません。
私も樹木医の勉強をするまでは知りませんでした。
今回は、樹木の根が起こす酸欠についてお話しさせて頂きます。
 
樹木の根は、深く植えすぎたり(図1)、植えた後にたくさんの土を根元に盛ったりする(図3)と酸欠を起こしてしまいます。
土の浅い所には酸素はたくさんありますが、深い所では酸素は少なくなるため、酸欠を起こしてしまうのです。
酸欠を起こすと根が弱ってしまい、時には根が腐ってしまったり、樹勢が衰退してしまう可能性があります。
中には、この状況を切り抜けようと頑張る樹木(図4)もいます。
元の根よりも高い位置から新しい根を出して、浅い所の酸素を取り込もうと頑張ります。
樹木が新しい根を出すときにはたくさんのエネルギーを使うので、早めに対応をして、樹木の負担を軽減してあげましょう。
 
今回の調査対象になっていた樹木は、多く盛られた土を除去し、経過観察を行うことにしました。
 
*周辺の環境や樹木の状態によっては深く植えた方が良い状況もあります
 
図1
図2
図3
図4
苦しくて、二段根が出ている様子
深植え状態

樹木医日記~木々との語らい~No.39

フジの異変 
 
今年もフジが随所で美しい花を咲かせてくれていました。
フジの名所に見に行かれた方も多いのではないでしょうか。
 
ところが、
「今年のフジは花が短いな・・・」
「もう少しで咲きそうなのに、蕾のまま落ちてしまう・・・」
こんな呟きを耳にする機会がいくつかありました。
 
いつもとはちょっと違う感じのするフジ、皆さんの周りにありませんか。
フジツボミタマバエが寄生して膨らんだ蕾
蕾のまま花が開かないフジの房
フジの房はあるのに花が短い、花が咲く前に蕾が落ちてしまう。
こんな症状がみられたら要注意です。
それは、フジツボミタマバエの仕業 かもしれません。
 
フジツボミタマバエはフジの蕾に産卵します。
幼虫は充実した蕾の中で孵化し、咲く直前の蕾を内部から食い荒らします。
結果、花は咲かず、蕾のまま地面に落ちてしまうのです。
 
 
地面に落ちてしまったフジの蕾
落ちた蕾を割ってみると、次々と蛆虫が・・・
丹精込めて育てたフジが咲かない、弱っていく、そんな姿は見たくありません。
しかし、残念ながら今のところ確実な対処法は確立されていないようです。
 
弊社では、ある程度発生を抑制するための処置を行い改善が見られた事例がありますので、
もしそのような症状のフジがあれば 一度ご相談頂ければと思います。
 

樹木医日記~木々との語らい~No.38

クロマツの樹勢回復処置 (樹木医 高野 絵里奈)
 
北樹木医が樹木医日記No.31、35で紹介したクロマツの樹勢回復処置について引き続きご報告します。
 
400年以上もの間、この土地の歴史を見守ってきたクロマツです。
様々な自然現象で枝折れ等により沢山の傷が出来てしまいました。
この様な傷は放置しておくと患部から腐朽が入り枝・幹を腐らせて行きます。
実際このクロマツの中心部は空洞化が進んでしまっている状態なのです。
よって今回の処置は、枝折れ等によってできた空洞部分を珪藻セラミックで蓋をし、クロマツ自身の治癒力で穴を塞ぐ手助けをすることを目的としています。
 
樹木は、下のイラストのように、折れたり切られたりした部分からカルスという癒合組織を作ります。
カルスは分裂・増殖を繰り返して樹皮に分化し傷を修復するのです。
 
枝折れや剪定で傷ついた枝は、
中心に向かってカルスを巻きます。
長い年月をかけて樹皮で覆い完治。
この松は患部の腐朽が進み、空洞化が随所に見られます。
この状態だと松自身の力だけでは穴を塞ぐことは難しく、また出来たとしても途方もない時間が必要になります。
今のままでは、更に腐朽が進み穴が拡大し、枝や幹の強度低下が懸念されます。
 
今回の治療は、下のイラストのように空洞化してしまっている枝を珪藻セラミックで塞ぎ、カルスで傷を塞ぎやすくする手助けを行おうという訳です。
 
 
傷んで空洞化した枝を、
切断し直します。
下地とパテで傷口を埋めます。
カルスが成長し傷を塞いで完治します。
before
after
 チェーンソーを使い患部を整え、パテで穴を埋めます。   さあ、これで処置完了です。穴の開いた患部が埋まりました。
                             これで腐朽の進行にブレーキを掛けられるはずです。
 
後はこのクロマツの治癒力に委ねることになります。
老木でもあり、患部が完全に樹皮で覆われるまでにはどれほどの年月を要するかは分かりませんが、きっと自身の力で傷を癒して行ってくれることでしょう。
今後も経過観察をし、見守って行きたいと思います。
 
最後に今回の作業では27ⅿの高所作業車を駆使しての作業となりました。
見晴らしは抜群でしたが、遮るものも何もない上空は風も強く、揺れと寒さで大変な作業でした。
しかし、この巨松はこんな過酷な状況でも400年以上ずっと人々の生活を見守ってくれていたと思うと、なんだかとても愛おしく、感謝の気持ちで一杯になりました。
これからも末永く生き続けてくれることを願います。

樹木医日記~木々との語らい~No.37

 
ナウシカになりたくて(樹木医 高野 絵理奈)
 
厳しい試験を乗り越えて試験に合格し、樹木医になりました。
小さい頃から風の谷のナウシカが好きで、いつかナウシカみたいになりたいと思ったことが樹木医を目指したきっかけです。
樹木医試験に向けての勉強は教科書の解読からでした。教科書はとても難しく、用語をインターネットや別の本から調べなければ読むことができませんでした。例えば、葉序。これは葉っぱの付き方の事なんですね。
1次試験の筆記テスト突破後は、2週間の勉強合宿の様な2次試験が待っていました。前日に講義や実習で行った事を翌日の朝にテストされるので、夜も安心して寝ることができませんでした。
そんな試練も樹木が好きという気持ちと周囲の方の支えでなんとか乗り切る事ができ、無事に合格することができました。
これからは、3人の樹木医の先輩方からご享受頂き、樹木と人の関係をより良くできる樹木医を目指して頑張ります!
テキスト
参考資料

樹木医日記~木々との語らい~No.36

巨大シダレザクラの移植(樹木医 北 和俊)
 
シダレザクラの移植作業について報告します。
今回移植したシダレザクラは高さ約8.5ⅿ、幹周約1ⅿとかなり大きなものです。
 
1.10ヶ月前に「根回し」を行いました
 
移植を行うにあたり予め準備するのが「根回し」という作業です。
当HPの「植木屋の女房№40」で10ヶ月前のこの時の様子を紹介しています。
 
造園業で行われる”根回し”とは、移植の数ヶ月前に根を切断することで細根の発生を促し、
移植先で根を活着しやすくさせる作業のことです。
 
細根が発生するまでには約半年から1年以上を要するため、予めそのような作業が必要になります。
大きな木の移植には、事前に入念な準備が必要なのです。
日常的に使われる”根回し”という言葉の語源となる仕事です。 
2.まずは掘り取り
 
まずは根鉢周りの土を掘り取り、根に着いた土が落ちないように根巻き作業を行います。
細根がしっかり出ているか、ちょっとドキドキしながらユンボを動かします。
3.ドキドキドキ・・・、細根は? 
 
見てください! 細根、確認できました。
ちゃんと根回しの効果が表れています。移植先での健やかな成長が期待できます。
細根写真1
細根写真2
4.次は根巻き作業
 
皆で息を合わせて緑化テープ、緑化縄を巻き付けます。
ポイントは縄の緩みが出ないようにすること。
根鉢を崩さないようにすること。
 
丁寧に綺麗に根巻きできました。
5.さぁ!積み込みです
 
この規模の移植の場合、人力では到底及ばないため、大型重機を使います。
ラフタークレーンを駆使し、木を傷めないように、かつ周囲の安全に最大限注意して積み込みます。
根鉢を崩さないように、吊り具で固定します。
移動するときに枝が折れてしまわないように、剪定したり枝を縛る作業を行います。
5.今回の移植は移動がもっとも大変でした
 
移植先は300mほと離れたところで、近いのですが、
両脇に電信柱と生垣があり、非常に狭い道を通る移動でした。
N君いわく「死にそうだった」。
この過程の写真がないので紹介できませんが、極度の緊張感の中での仕事でした。
 
再びクレーンで吊り上げ、丁寧に植え付けます。
角度や正面を見極め、微妙な調整を行い、水極めをし、支柱を設置して移植完了です。
 
4月の上旬の開花、その後の新葉の展開が見られれば、根が順調に活着したとみなせます。
2か月後の花を楽しみに待ちたいと思います。
この先に、狭い道の難所が待ち受けていました。
再びラフタークレーンで吊り上げます。
角度にも拘って丁寧に植え付けます。
移植完了。お疲れさまでした。
 
 
 

樹木医日記~木々との語らい~ No.35

クロマツノ樹勢回復(樹木医 北 和俊)

 6か月ほど前に菌根菌治療を行ったクロマツがあります。菌根菌とクロマツの根との共生関係が良好な兆候として、キノコが発生したという事例があるので、その確認も含めて経過観察に訪れてみました。
根周りの菌根菌治療を行った場所をみてまわると、5か所にキノコを確認できました。(写真1)
菌根菌とクロマツの根との共生関係が良好な兆候はみられましたが、6か月前の状態と比べて枝葉の量はそれほど増加しているとは言い難い状況です。(写真2)
今年の春から伸びてきた枝は、前年に作られた芽から展開した枝葉なので、菌根菌治療の影響がでてくるのは、今年作られた芽が展開する来年以降ではないか、と考えます。
今後、さらに枝葉の量が増加、樹勢が上向くことを期待し、観察を続けていきたいと思います。
 

写真1
 
写真2(左記、赤丸部のキノコ)
 

樹木医日記~木々との語らい~ No.34

カエデの異変(樹木医 冨田 改)

紅葉の季節が始まっております。

その年の気候とも関係しますが、今年の紅葉はどうだろうか。 

紅葉の代表的な木はカエデの仲間ですが、近年、紅葉が始まる前に落葉してしまったり、

葉が褐色に変色してしまったりと残念な結果となっています。 

 

皆さまの周りにはこんな現象は出ておりませんか。

これは明らかに病気です。

もしこのような症状が出ているようでしたら専門家に診てもらい、対処が必要です。

黒紋病、うどんこ病、首垂細菌病等、原因は様々考えられます。

お早目にご相談下さい。

 

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.32

山下公園 土壌調査研修会(樹木医 関 隆夫)

〈山下公園 土壌調査研修会〉
横浜市と樹木医会神奈川県支部の共催で行われた研修会を紹介します。横浜市の山下公園の一角で横浜市の職員と神奈川樹木医会会員の総勢60人が植栽基盤調査の研修をおこないました。
今回の研修の目的は土壌調査の実習はもちろんですが、樹木医の仕事を横浜市職員の方々に知ってもらうことにあります。
まだまだ樹木医の認知度は低いと思われるので。
 
植栽基盤の調査に使う器具は、長谷川式土壌硬度計、長谷川式透水試験器、長谷川式検土丈、山中式硬度計等があるのですが、それらすべての使い方の研修をおこないました。
当社がユンボを使って観察用の穴を掘ったり参加者を誘導したりして、研修会のお手伝いをしました。
山下公園は関東大震災の時のがれきを埋め立ててその上に作った公園です。
今回の研修では深さ1mの観察用の穴を掘りましたが、その深さではまだ当時のがれきはでできませんでした。
後で資料を調べたら震災がれきがあるのは現在の地盤より5m下だそうです。
 
興味深かったのは検土丈を使って土壌のサンプルを採取した時のことです。深さ2.5mぐらいで水が出てきました。
しかもその水は塩水でした。近くの岸壁へ行って地上から海水面までの高さを測るとぴったり2.5mでした。
もしかすると山下公園の土壌は厚さ2.5mぐらいで、海水がしみ込んでいるのかもしれません。
公園の樹木は高さ10mを越えているものもありますので地盤の厚さが2.5mあればその大きさまでは育つということでしょうか。
写真1
写真2
私と当社の北樹木医(右)

樹木医日記 ~木々との語らい~ No.31

クロマツの樹勢回復作業(樹木医 北 和俊)

〈クロマツの樹勢回復作業〉
今回はクロマツの樹勢回復について取り上げます。このクロマツは樹令420年、高さ27.7m、幹周り5.62mの堂々たる容姿の樹木
です(写真1)。
近年、樹勢の衰退が目立つようになってきたため、樹勢を向上させるべく菌根菌と肥料を用いた治療作業を行いました。
菌根菌とは、植物と共生関係にある菌類(キノコ・カビ類)のことです。アカマツ林に発生するマツタケも菌根菌の一種です。
菌根菌が根につくと、菌糸が、マツの根が届かないところまで広がり、マツは養水分を効率的に吸収できるようになります。
肥料は、モリブデンという微量要素を配合しているもの使いました。モリブデンは植物の生育に必要なエネルギーを作り出す回路に
なくてはならない成分です。
掘削には、空気の力で掘削ができるエアースコップを用いました(写真2)。これを用いることで、根を傷つけることなく掘削できるよう
になります。エアースコップを用いてマツの根を探り出し、上記の資材を施用しました(写真3)。
  今回の治療作業により、樹勢が回復し、地域のシンボルとなっているこのクロマツが末永く生育し続けていくことを願います。
写真1
TOPへ戻る